出会い口説きALLOK

デキル男のためのライフスタイルマガジンです

保険のセールスレディーが美人すぎたのでナンパしたが

39才独身、彼女なし。
このプロフィールは正直キツイものがある。少なくともオレが小さいころ、こんな大人はいなかったと思うし、いたとしても世間から白眼視されていただろう。しかもこのまま来年になれば最初の数字は40になるのだ。さすがに〝このまま〞ってことはないと期待したいのだが、去年も同じようなことを思っていたわけだから、その可能性はある。 
40才独身、婚約者あり。
 せめてこれぐらいにはなっていたいし、なってなければもう人生も終わりだ。ずいぶん昔、知り合いに頼まれて生命保険に加入したのだが、ついこの間、その担当者が代わったので挨拶をしたい旨のハガキが自宅に届いた。新しい担当者の名前は、高橋みの
り(仮名)さん。女性だ。少しやらしいかと思いつつ、彼女の名前と保険会社名で検索してみたところ、当人のフェイスブックが出てきた。どれどれ、写真は…。
めっちゃ美人の25才だ!カフェでお茶をするその姿は、まさに俺の理想そのもの。仕事もしっかりしているわけだし結婚相手としては申し分ない。これも何かの縁と、ハガキに書かれた事務所の番号に連絡してみた。
「はい、お電話代わりました。高橋です」
「あの、赤澤といいます。ハガキが入っていたもので…」
「わざわざありがとうございます!」
快活で丁寧な声が返ってきた。最近はマッサージ嬢だとか合コン慣れした女だとか、雑っぽい異性としかしゃべってないのですごく新鮮だ。高橋さんは言う。
「ぜひお会いしたいです。赤澤さまのご都合のいい時間はありますか?」
 もちろん保険営業のためとはわかっているが、あの写真の女性と生で対面できるチャンスを逃すわけにはいかない。そもそも、そのために電話をしたんだし。互いのスケジュールを確認し合い、週末、オレの地元の喫茶店でいちど挨拶をしようということになった。当日、やってきたのは目もくらむような美女だった。紺のパンツスーツ姿がまぶしすぎる。
「初めまして。●●生命の高橋です。本日はお忙しい中ありがとうございます!」
 喫茶店に向かい合って着席する。生身は写真の5倍キレイだ。こんな子が芸能界ではなく保険業界にいるなんてどうなってんだ。ひととおりの挨拶を終えたところで、あらかじめこちらの契約情報を調べておいたのか、高橋さんがラフに笑った。
「38才には見えませんね。もっとお若く見えます」
「え、ああ、私服だからかな」
「まだご結婚はされてないんですよね?」
「ええ、出会いがなくて」
「へ〜。こんな方が独身だなんて信じられないですよ」
 気分がいい。こんな台詞、マッサージ嬢でも言ってくれないぞ。
「高橋さんはカレシはいないの?」
「ええ、そうですね」
 ホンマかいな。そっちのほうが信じられないけど。でも確かにフェイスブックには男と一緒の写真はなかったしな。そんなこんなで30分。特に新たに勧誘されることもなく、ご挨拶は終了した。今後も●●生命さんにはお世話になるとしよう。さあ、勝負はここからだ。携帯番号は交換しておいたので、次はプライベートで会いたいところなのだが、なにか手はあるだろうか。と案じていたら、翌日、高橋さんから電話があった。保険のことでどうしてもお伝えしておきたいことがあると、切実な様子だ。
「…ですので、またお時間いただけないでしょうか」まだ仕事を引きずってるところが
気にくわないけれど、断ったらここでおしまいだ。平日の夜に会うことを了承した。
 そして当日、また同じ喫茶店へ。彼女がどうしても伝えたかったことの内容とは、
「現在加入されているのは貯蓄型なんですね。これを…」
 てなものだった。詳しいことはよくわからないが、掛け捨て型の保険にしたほうが何かとよろしい、とのことらしい。そんな勧誘にほいほい乗るほどバカじゃない。ここは提案に納得するフリをしながら攻勢に出るべきだ。
「あの、高橋さん。保険の話は前向きに考えてまた連絡しますんで」
「はい」
「このあと、飲みにでも行きませんか?」
「…そうですねぇ。そういうのはちょっと」
「ちょっと?」
「今回はお仕事の件でおじゃましてますので…」やはり、そうくるか。くそ、こうなりゃヤケクソだ。
「いや、あの、なんていうか。この前にお会いしたときに高橋さんのことタイプだなと思ったもので」
「ありがとうございます…」
「なので付き合ってもらえるなら掛け捨ての保険でもなんでも入ろうかなと」
「……」
気まずい空気が流れた。考えてみればここまではっきり告白したのも久しぶりかもしれない。心臓がバクバクしている。高橋さん、この勇気を認めてくれ。でも彼女は、どこ吹く風だ。
「赤澤さん、冗談はやめて真剣に考えましょう。ご自身の将来のことや健康のことや…」
「ええ、まあ…」
「あと私、結婚を約束してる相手がいるので…」
 へ? は? なんだって!? 彼氏いないんじゃなかったのか。
「…そうですね。よく聞かれるのでいないって答えてるんですけど、赤澤さんには本当のことをお伝えしようかと思って」
 ガーン! なんだこれは。貢がせるだけ貢がせて、いざとなったら逃げていく水商売女みたいなスタンスは!
 実際には貢いでないし、いざとなってもいないんだけど、これまでの時間はどうなる。恋い焦がれたオレの思いはどうなる。その後、さほどショックを受けていない素振りで、その婚約者とかいう男に関する質問をして軽くノロケられ、喫茶店を後にした。
 もう心の底から、女という生き物が信じられなくなった。どいつもこいつもどうしてこうなんだ。保険、解約してやるぞ!