出会い口説きALLOK

デキル男のためのライフスタイルマガジンです

本当にあった恋人商法の手口

フェイスブックに見知らぬ女性からメールが届いた。
︿最近東京に越してきてまだお友達がいないので仲良くしてくれたら嬉しいです。よか
ったら直接メールください→○△×@docomo.ne.jp マキ﹀
 怪しいけど、いちおう彼女のプロフィールを確認する。本人の写真は載ってないが、21才でパン屋アルバイトだそうな。へえ。
 こういうのってたいてい、出会い系サイトへの誘導やマルチの勧誘と決まっているも
のだが、この子はどうやって男を釣るつもりなんだろう。ヒマつぶしも兼ねて付き合っ
てやるとしよう。
 僕で良かったら話相手になりますよ、と返信。返事はすぐにやってきた。
︿彼女さんとかいらっしゃったら迷惑だからメールやめますけど、大丈夫ですか?﹀
 はいはい、いないので大丈夫ですよ、っと。
 それから数日間メールのやりとりが続いた。一日に4、5通だが、『家で1人で缶の
カクテル飲んでる(涙)』とか『今日もバイト終わって狭い部屋でコンビニのパスタだ
よ〜。寂しすぎぃ』など、まるでつまらなそうな毎日の報告が届く。何かに勧誘される
様子は今のところない。
 だが1週間後、いかにも怪しい文言が届いた。
︿週末、時間あります? ウチ家具がぜんぜんなくて、一緒にお買い物手伝ってもらえ
ないかなぁと思って……﹀
 ふーん。家具のお買い物か。別にオレが買うわけじゃないんだし、心配は無用か。どんな顔してるのかだけでも見にいくとしよう。

土曜日、待ち合わせの渋谷ハチ公前で待っていたら女性が近づいてきた。
 ……なんというか、化粧をケバくしたガッキーってな感じだ。可愛いんだけど、ピン
クのキャミソールと黒のミニスカはまるで風俗嬢みたいな雰囲気だ。パン屋バイトには
見えない。
「マキちゃん?」
「はい。あ、なんか思ってたイメージと違ってスゴイ格好いいですね」
 見え透いたお世辞でも嬉しいものだ。
「そう? マキちゃんも可愛いよ」
「ありがとうございます。お店の場所調べておいたんで行きましょうか」
 家具屋に向かって歩きはじめた途端、思いがけない出来事が。マキがオレの左手をつ
かみ、指を絡ませてきたのだ。うかつにもドキドキする。
 彼女の案内で到着したのは古びた雑居ビルだ。
「え、ここ?」
「そうみたい。3階ですって」
 家具屋って普通はもっとオシャレな路面店だったりするんじゃないのか?
 狭いエレベータに乗り3階へ。マキは「ここだ」と言ってオフィス風のドアを開けて
ずかずか入っていく。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
 中にはスーツ姿の若い男がいた。パーテーションで仕切られた席に案内される。家具
なんてどこにも見あたらないけど…。
 スーツ男が冊子を持って近づいてきた。
「こちらをご覧になってみてください」
 パラパラと開けば家具のカタログだ。ん? テーブルが10万? この子、こんな高いの買えるのかよ。
「あ〜、これ可愛い〜。ね、カワイくないですか?」
 マキはキャッキャ言いながらカタログを眺めているが、他の商品もべらぼうに高い。
勉強机10万円、テレビ台15万円、ベッドが40万円。まあ他人がどんなモノを買おうと関係ないのだが。
 と、マキがいきなり腕をつかんできた。
「これイイと思いません?」
 そう言いつつおっぱいをスリスリしてくる。まさかおねだり? やめてくれよ。
 30分ほどしてスーツ男が近づいてきた。
「ご新居に置く家具をお探しですか? それにしてもお似合いのカップルですね〜」
 マキはもじもじしながら顔を赤らめている。そこからさらに20分。マキは購入するものを絞ったようだ。
「このテーブルがいいと思うんだけど、どう?」

12万円もする4人掛けのダイニングテーブルだ。
「高いけど大丈夫なの?」
 一瞬の無言の後、マキがまたオレの腕に絡みついた。
「これ買えば毎日一緒にゴハン食べられるし、ワタシもお料理とか頑張れるなぁ」
「ん?」
「ワタシの部屋に置いたら一緒に食べてくれますか?」
 …どういうこと? なんか告白されてるみたいだけど。
「ワタシじゃダメですか?」
「ダメとかじゃないけど…」
「食べにきてくれます? それと将来は一緒に住めたら嬉しいなぁ。そんなすぐにってのはオカシイけど、それくらい好きなんです」
 そう言いながらマキは目を見つめてきた。
「いずれ一緒に住むわけだし、できれば半分出してもらえないかな? よく考えたらまだ今月家賃払ってなくて…」
 そう来るか。これがいわゆる恋人商法ってやつの手口なんだな。ダマされてなるもの
か。
 …いや、ちょっと待った。よく考えれば、このテーブルは彼女の部屋に置かれるんだ
よな。たかが6万円(テーブル代の半額)を男からせしめるために、こんなでかいテー
ブルを部屋に置くような面倒をかけるものだろうか?
 なにより半額はマキ自身が出すと言っているのだ。普通デート商法は宝石や毛皮なん
かの料金を男に全額払わせてドロンするものだが、折半で購入するなら騙しじゃないのでは? つまりこの子、本気でオレのことが好き?
「わかった。6万は出すよ」
「やった! ねえ、2ヶ月くらいしたら一緒に住もうよ。このテーブル、毎日ピカピカ
に磨いておくからね」
「うん。楽しみにしてるよ」
 そこにさっきのスーツ男が戻ってきた。
「あ、そちらのテーブルですか。実は今だと半額の6万円で提供させていただけます」
「ええ〜、スゴーい」
 なんて運とタイミングがいいんだ。
「それでは契約書にご記入ください」
 出された用紙は、6万円の12回払いローンの契約書だ。オレが出すと言ったのは6万
円、契約書も6万円。だからなんとなく納得したかたちでサインをすることになった。
      ★
 お察しのとおり、彼女は買い物のあとすぐに「バイト先の店長が急遽出勤してほしいって」と帰っていった。
 しばらくは恋人らしいメールのやりとりが続いたものの、ついに返事が届かなくなり、アドレスも電話番号も繋がらなくなった。