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出会い口説きALLOK

デキル男のためのライフスタイルマガジンです

今時テレクラに出会いはあるのか

渋谷はどこか浮ついている。大きめの買い物袋を提げた家族連れや、ハイネケンの瓶ビールを持った外国人が、やたらと高いテンションで駅前をウロウロしている。
その雑踏の中を、オレは一人、まっすぐテレクラへと向かう。
「おっ客さま.!ロングコースのご利用あっりがとうございま.す!」
店員は気持ち悪いほど高いテンションで迎え入れてくれた。DVDコーナーには、物好きな男性客が2人。この人たちは大晦日にこんな場所でどういうつもりなのだろう。
入室後すぐ、威勢よくコールが鳴り響いた。
「もしもし」
「どうも.」
わりと若めな女性の声だ。後ろはやや騒がしく「次は恵比寿、恵比寿.」というアナウンスが聞こえる。電車の中か?
「もしかして電車の中ですか」
「うん。今から渋谷で会える人探してるんだけど」
「ぼくも探してたんですよ」
「暇なの?じゃあ会おうよ」
話が早い。
「どういう感じで会いたいんですか?お茶とかワリキリとか……」
「ううん、暇なだけ。会ってから決めようよ」
いまどき、単純な暇つぶしでテレクラ男に会う女なんているものだろうか。不審だ。
「あ、渋谷着いたわ。そしたらとりあえず会おうか」
急いで服装を教えあい、駅近くの銀行前で待ち合わせすることになった。
彼女が伝えてきた服装は黒のコートにグレーのストール。年齢は25才だ。
急いでテレクラを出ると、銀行前には、女性が一人立っていた。そのまま東急百貨店へと流れて行きそうな、ずいぶんお洒落な服装だ。首に巻いたグレーのストールも様になってるし。テレクラでこんなことがあっていいのか?
「あの、電話くれた方でいいんですよね」
「うん、そうだよ。ちょっと寒いから喫茶店でも入らない?」
すぐ近くの喫茶店は、買い物帰りのカップル客が8割を占めていた。堂々とそこに混じり、2人で黒糖ラテを注文する。こ
こまでほとんど自己紹介なしだ。
「あの、ヘンな質問ですけど、なんでかけてきたんですか?」
「うん、暇だったの。それだけ」
今夜、友人とカウントダウンパーティをするまでの間、暇つぶしのためにテレクラにかけてきたという。
まったくもって謎だ。パーティに参加するようなキャラの女性が、暇だからといってテレクラを利用するとは考えられない。となると、見栄を張った作り話か。
「ちなみに、彼氏さんは?」
「うーん、なんか彼氏っていうのは重くてさ、こういうほうが好きなんだよね」
「テレクラとかですか」
「うん」
もしかして、いま流行りの肉食系女子ってやつか?
「じゃあセックスはけっこうしてるんですね」
「するよ」
「それは……ワリキリとか?」
「やんない、そういうのはやんない。別にお金とか欲しいわけじゃないしね」
どういうことだ。お洒落な25才が、金ももらわずにテレクラでセックスするなんて。
「じゃあ、ホテルとか、そういうとこ行きましょうか」
「うーん……」
沈黙だ。どうした? 
何を考えてるんだ?
「なんかそういう気分になれないわ。西島秀俊さんなら会った瞬間自分からレイプするくらいヤりたいんだけどさ」
「それは、僕だとヤリたくないってことですか」
「…………」
再度、沈黙が続く。
ようやく理解できた。この人は、テレクラ界ではもう20年も前に絶滅したといわれる、タイプの男とならタダでセックスする女性なのだ。
こうして出会えたことはラッキーだが、好かれなかった以上、前には進めない。神様、せっかくのプレゼントを無にしてしまってすみません。

午後7時、さらに増える人混みを避けるようにトボトボとテレクラに戻り、再度電話を待つ。
次のコールの第一声はこれだった。
「ムラムラした気分になってない?」
受話器から聞こえてきたのは30代後半と思われる、気持ち悪いほどに甘い女の声だった。
「それはワリキリとかですかね」
「そ.なのう!エッチしたくてしょうがなくって。お兄さん最近イチャイチャしてる?」
「いやあ、もうずっとしてないですね」
「なによちょっと.!ダメダメダメ!」
「ダメですか?」
「うん、今ね錦糸町にいるんだけどね」
錦糸町は千葉方面にある猥雑な繁華街だ。渋谷からはちょうど逆側になる。
「最近エッチからはなれてるんだったら、こっちまで来てエッチしてもいいんじゃない?」
「わかりました、向かいますよ」「それでね、お金なんだけど.、ちょっとね、1万5千円ほどもらえれば助かるかなって。いっサービスするから、ね?」丈夫ですよ、ちなみにお姉今おいくつなんですか?」 
年はね…
34才よ
一瞬の間が空いた
「容姿は誰かに似てるって言われたりしますかね?」
「うーんと、田中美佐子って言われるかな」
田中美佐子似が売春なんてするもんだろうか?
午後8時の電車は、8割ほどが空席だった。こんなときにせこせこ移動するバカは少ないようだ。
錦糸町駅をおり、改札前で電話をかける。耳元でゴールデンボンバーの『女々しくて』の待ち歌が聞こえてきた。
「もしもし」と、やや早口で彼女が出る。
「着きました。どちらに向かえばいいですかね」
「南口!ちょっと、ちゃんといるから!きてきて!」
電話は一方的に切られてしまった。南口に向かえばいいのか?
人がまばらな南口から電話をかけようとしたところで、ちょうど彼女からの着信が。
「いま出てきた人でしょ!こっち!」
ロングのダウンジャケットを着た小さな女性がケータイを耳にあてながら手を振っていた。
「こんばんは」
「ああ、行きましょ、行きましょ!」
あいさつもそこそこに、彼女はスタスタと歩き出した。眉毛はほとんど消えており、唇はカサカサ、顔は全体的にぼっこぼこに殴られたフランケンに似ている。田中美佐子の面影はゼロだ。
歩道橋にさしかかったところでフランケンさんの歩き方が少しぎこちなくなった。足をひきずっているようだ。
左足のサンダルの紐がほどけている。しかも、靴下を履いておらず素足だ。
「足、どうしたんですか」「うん、外反母趾なの。気にしないで」
フランケンさんは、こちらに目を合わせようとせず早口で続ける。
「今夜はなにするの?」
「できれば、誰かと一緒に過ごしたいですね」
「ああ、そう。私はこの後はね、
千葉の方に行くのよ」
「ご自宅ですか?」
「会社の寮に住んでるのよ。家賃が5万円。高いのよね。その寮のコと、今夜は蕎麦食べるかしら」
ホテルの部屋のドアがしまった瞬間、フランケンさんが言う。
「先にお金、もらっていいかしら。もらった分、ちゃんとサービスするからね」
「ああ、お願いします」
「そういえばタバコ吸うのかしらお兄さん」「いえ、吸いたいなら吸って全然大丈夫ですよ」
「ううん、私は吸わないから吸わないから」
シャワーからあがり、ベッド
に横になりながらテレビをつける。
「そういえば待ち歌『女々しくて』にしてましたよね」
「あ、ゴールデンボンバー!」
フランケンさんのチンコを握る手が一瞬止まる。
「別に見ながらフェラしていいですよ」
「ほんと?じゃあそうするね」
彼女にチンコをしゃぶられながら、樽美酒による大車輪のパフォーマンスを見る。こんな紅白鑑賞も、ぜいたくといえばぜいたくかもしれない。 適度に勃起したところで、彼女がチンコにまたがってきた。
え?
ナマでするつもりなのか?
「あの、ゴムつけますんで」
「え、ナマにしないの?ナマしたことないの?」
無視して黙ってコンドームをつけ、乾燥しきったマンコにチンコを押し込む。当然のように気持ちよくもなんともない。
チンコが一向に立たないことがわかると、フランケンさんは俺をさっさと風呂へ促した。もうサービス終了ってことらしい。ほどなくして風呂の中にタバコの匂いが入ってきた。ドアを開けると彼女がタバコを吸っている。
「タバコ吸うんですね」
「ちがうの!3時と12時だけ!休憩のときだけ!」
あの、別に何も怒ってないんですけど。それに今、3時でも12時でもないんですけど。
すでに時刻は11時、渋谷へ戻るために乗り込んだ電車には、気持ちよくもなんともない。2組の中国人観光客とオレ以外
に乗客はいなかった。
テレクラに戻ると、すぐにコールが。
「池袋まで来れます?」
おそらくこれが最後のアポとなるだろう。
「大丈夫です、すぐいけますよ」
ホテル代別イチゴーで、34才、黒髪ロング清楚系を自称するその女性とアポることになった。
池袋の西口駅前は、4.5人の若者が缶チューハイ片手に数組ダベっているくらいで、静けさが漂っていた。
指定されたマックの前には、雪女のような幽霊が立っていた。汚いモコモコしたピンクの毛布地のコート、長い前髪とマスクのせいで素顔はちゃんと拝めない。なんだかこの人からは、強烈な死の匂いが漂う。
「あのあのあの、お金先にいただけますか」
「それは払いますけど、ホテルに入ってからにしましょうよ」
雪女は無言でホテル方面へと歩き出す。
ふと手元の時計を見ると時刻は0時2分。
適当にあいづちをうちながらラブホテルへ近づいてきたそのとき、雪女が言った。
「あの、もういいです」
「え?」
「帰っていいですか。ちょっとしたくなくなったの」
「お金、ちゃんと先払いしますけど」
「いや、いいんで」
雪女はこちらに背中を向けてすーっと去っていった。なんだか不気味なものを見てしまったようだ。