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出会い口説きALLOK

デキル男のためのライフスタイルマガジンです

どんなところに出会いがあるかわからない話

つまらない傷害事件を起こし、留置所にブチ込まれた。
じきに40の声を聞こうかというのに、職も無ければ女にも恵まれない不甲斐なさ。挙げ句にケンカ沙汰でパクられたってんだから、我ながら情けないにもほどがある。いったい何をやっているんだ、俺は。
そんなどん底の精神状態にあって、唯一救いだったのは同房の人間に恵まれたことだ。
特に前科4犯、キャリア20年のベテラン中年ドロボーは、はじめての留置所でおどおどする俺になにかと気を遣ってくれるばかりでなく、こんなアドバイスさえしてくれた。「ここをパイ(釈放)になったってどうせ無職なんだろ?だったら空き巣でもやってみたらどうだい」
「え、そんなことできるわけないじゃないっすか」
「オマエみたいな素人でもすぐ使えるテクニックを教えてやるよ。それで食っていけばいいじゃねえか」
ひと昔前、住宅の玄関ドアに広く用いられていた錠前にピンタンブラー錠というのがある。ドアノブの真ん中に鍵穴があるような、古くさいアレだ。
本来、この錠を不正に開けるには専用のピッキング道具と、それを扱う技術と知識が必要だが、10年以上使用されたタンブラー錠に限っては、内部が劣化しているため、特殊工具がなくても簡単に開錠できると彼は言う。
「必要な道具は精密なマ●ナ●●ラ●バー1本だけ。そいつを鍵穴に差し込んで●●●でいいんだ。いまだにタンブラー錠を使っている古い民家やアパートは腐るほどあるからためしてみな。オモシロイほどあっさり侵入できるぜ」
そんなシンプルな方法で鍵が開くのかはなはだ疑問ではあったが、ベテランの泥棒が言うのだからきっと本当なのだろう。ふうん、こりゃイイことを教わったぞ。
後日、起訴猶予で留置場をでた俺は、さっそくカバンに●ラ●バーを忍ばせ、あちこちの住宅街を徘徊することに。
泥棒のオッサンが説明したとおり、築15年ほどの古い住宅をつぶさにチェックして回ったところ、ソートーな確率でピンタンブラー錠が使用されていた。が、他人の家に無断侵入するというのは想像以上に勇気がいる。いざターゲットを決めても体がすくんでしまい、結局、すごすご逃げ帰るパターンを繰りかえすだけだった。
せっかくの情報をもらいながら新たな職は見つからなかったが、常にマ●ナ●●ラ●バーを持ち歩くことで、俺はまったく予期せぬ幸運を手に入れることになる。例によって空き巣が未遂に終わり、家に帰るべく電車に揺られていたその日、ちょっとしたハプニングがあった。女性客のスカートがドアに挟まったまま、電車が動き出してしまったのだ。
次の駅でこっち側のドアが開けば一件落着だが、それまで十数分もこのままってのは可哀想だ。
…あ、そうだ。俺、いいもん持ってるじゃん。「ちょっと待ってて」
バンから取り出したマ●ナ●●ラ●バーをドアとドアの間に差し込み、テコの要領でグイッと押し開くと、その拍子にスカートはスッと抜けた。
「あ、どうもありがとうございます!」
「いや、そんなそんな…」
もしカバンに入っていたのがごちゃごちゃしたピッキングツールならば、こうは上手くいかなかったろう。単純な形状のマ●ナ●●ラ●バーだったからこそテコの原理が使えたのだ。後の流れは略すが、それから間もなく、俺はめでたく彼女と付き合うことになったのだった。もちろん、この一件のおかげで。
いったいこんな展開、誰が想像できるだろう。8年ぶりに女と交際することになったキッカケが、空き巣用に持ち歩いていた道具だなんて。
いまごろは懲役に行ってるであろう泥棒のおっさん、あんたには感謝してもしきれないくらいだ。