読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

出会い口説きALLOK

デキル男のためのライフスタイルマガジンです

街コンに参加してるアラサー女との出会い

大変なことになった。
 発端は、見知らぬ番号からかかってきた電話だ。声の主は初老っぽい女性だった。
「赤澤さんの息子さんですか」
「あ、はい」
「お父さんが倒れて入院しました」
 父親はオレが中2のときに家を出て行き、それ以来、家族とはずっと別居状態がつづいている(離婚はしていない)。大阪で零細企業を経営し、そこそこ羽振りよく暮らしているとは小耳にはさんでいたが、20年以上ロクに会話もしていないオレにとっては他人のようなものだ。
 電話をくれた女性が誰なのかはよくわからない。わざわざオレのケータイを調べて連絡をくれるとは親切な人だ。
 と思ったら、ちょっと様子が違った。
「私、お父さんに1500万円貸してるんです。返してもらえますか」―いろいろと聞いてみたら、とんでもないことになっていた。父親はあっちこっちから会社の運転資金を借りまくっていて、ウン千万単位、ヘタをすれば億ぐらいの借金を抱えているらしい。電話の女性も、債権者の一人のようだ。
 のっけから、連載テーマとはまったく関係ない話になってしまったが、このことによってオレの精神はすっかり病んでしまっている。弁護士に相談したところ、母親やオレまでが借金の肩代わりをしなければならない可能性が出てきてしまったのだ。
 もはや長澤まさみだなんだとのたまってる場合じゃなくなってしまった。人間なんて、心に余裕がないと恋愛なんかする気になれないものなのだ。マッサージ嬢のかおりとも疎遠になった。借金のことで頭がいっぱいなのもあるし、よくよく考えれば、やっぱりアイツはオレのことを奢り男としか見ていないような気がする。あぁ、出るのはタメ息ばかりだ。
 飲みながらそのようなことを友人に愚痴っていたら、彼が街コンで知り合ったという1人の女性を電話で呼び出してくれることになった。元気づけようとしてくれたのだろう。
「まあ、若くはないけど、性格は明るくてイイ子だよ」
「顔は?」
「まあ、それは自分で判断して」
 自分で判断か。ただ、この精神状態で紹介されても、困るといえば困る。なにより実の父親が借金まみれだったら結婚もしてくれないだろうし。
 …そんな心配は杞憂だった。待ち合わせのバーにやってきた女性ハルコは、おばちゃん顔の35才で、オレの理想と遠くかけ離れていたからだ。
 35才で街コンに参加してるぐらいなのだから、普段から結婚にあせっていて、今日もこうやってわざわざ出てきたのだろうけれど、申し訳ない、まったく興味がないです。
 しかしわざわざそんなことを口に
出すこともないので、適当に話を合わせることに。
「赤澤さん、飲まないんですか?」
「うん、クルマやから」
「へえ」
「モテようと思って買ったんやけど」「モテますか?」
「いやー、あかんね」
 ああ、こんなどうでもいい会話をしてる場合じゃないのに。オヤジの借金、
どう処理すればいいんだ。頭が痛い。適当なところで理由をつけて帰ろうと思っていたのだが、なかなかタイミングがつかめないまま、だらだらした会話が続いた。
 興味はないけど、一応、礼儀として尋ねてみる。
「ハルコちゃんはどんな仕事してるん?」
「病院です。放射線技師って仕事」
 放射線技師。ずいぶん稼ぐ仕事だと聞いたことがある。なんでも彼女は医大を卒業し、いまの仕事に就いたという。そんなに優秀だったとは。
 ちょっと心が動いた。
 これまではバイトだろうが無職だろうが、容姿と性格さえ良ければ、金の有る無しはどうでもいいと思っていた。結婚したら専業主婦になってもらい、自分の稼ぎで養っていく。そう考えていたからだ。 しかし今、親の借金がのしかかるか
もしれない将来を思うと、金持ちの子と結婚したほうが幸せになれるような気がしてきた。
 独身男性のみなさんも一度は迷ったことがないだろうか。
 金のない美人か、金のある不美人か。
 どっちが幸せな人生を送れるんだろう。迷う。といっても今は、両者からアプローチを受けて二者択一に悩んでいるわけじゃない。今後の生き方として、どちらを目標にするかという話だ。
 とりあえずここは、興味ナシの態度をあらためて、ハルコもまた交際相手候補としておくほうが賢明だろう。
「ハルコちゃん、彼氏いるの?」
「いやー、いないですよ」
「結婚願望は?」
「そりゃありますよ」
「ふーん、そしたらオレみたいな男はどう?」
 この台詞はオレの得意なジャブだ。ほんのり好意を持っていることを伝えられるうえに、「いやーどうでしょう」みたいな曖昧な回答をされてもさほどショックを受けない便利な文句なのだ。
 しかしハルコの反応は、そのセーフティーネットをあっさり破ってしまった。
「ないですね」
「え?」
「うん、ないなー。うん、ない」
 ここまでハッキリ否定されるとは。なんてことだ。金持ってる女なんてロクでもないな。
 さてそんなわけで現在は、借金問題のせいで、将来をマトモに考えられる状況ではなくなっている。ミニスカ女子とすれ違っても目で追う気力すらないほどだ。