出会い口説きALLOK

デキル男のためのライフスタイルマガジンです

電車から見える景色に恋人募集の看板を出してみた

 

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ちょっと前に京都に行ったとき、新幹線の窓からぼんやり外を眺めていた。住宅街、パチンコ屋、スーツ屋どこも同じようなつまらない景色だ。せっかくのどかな田園地帯に入ったと思っても、そこには目障りな看板が並んで立ってるし。

なんちやら工務店とか、なんちやらノド飴とか。あんなもんに広告効果はあるんだろうか。少し計算してみよう。

新幹線のこっち向きの窓側席は、全部で約300席。空席もあるし、座ってたとしても寝てたり読書してたりするのがいてたりするので視界に入るのは3人いるかどうかってとこだろう。でも新幹線は数分間隔でひっきりなしに走っている。しかも毎日。しようもない看板だけど意外と広告効果はあるのかも。ノド飴買おうってなるのかも。

じゃあ、あそこで恋人を募集したらどうだろう?

考えは当然のようにそっちの方向へ向かった。まともに看板を作れば金がかかるはずだけど、あんなもん、自作して田んぼの真ん中に勝手に立てておいても誰も文句は言わんだろうし。

いったいあの看板はどのくらいのサイズなんだろう。下調べのため、新横浜~小田原問の畑に立つ、看板のそばまで行ってみた。

めつちやデカイ…。持参のメジャーでサイズを計ってみると、縦4m、横8mもある。広さで言えば20畳。ちょっとした宴会ができる広さだ。これくらいないと、新幹線からは見えないのか。こんなデカイ看板、どうやって作るんだ。紙に印刷するとしても、印刷会社にここまでデカイ紙あるんかな。

担当者は言う。
「ありませんね」
「いい方法はないですか?」
「10枚くらいの分割で印刷して、それを貼り合わせればできないことも…」
なるほど。それでいきましょう。

広告内容はすでに決まっている。恋人ボシューの一文と、顔写真。
さらにケータイ番号と、覚えやすいようゴロ合わせも載せておく。


5014、5019一これいーよこれ行く!。
これなら数秒で通り過ぎる新幹線の客にも覚えやすいはずだ。


印刷所から届けられた10分割の巨大広告をワゴン車に積み、新横浜~小田原間の田園地帯へ向かった。同乗者はヘルプ要員の男3人だ。

高架下に車を停め、さっそく貼り付け作業開始だ。まず左上に『恋』の字でしよ、次は『人」ね。おっと、電話番号は間違わずに貼ってくれよ。

1時間ほどで自作看板は完成した。

「でけ-」

「マジでスゲー」

2メートルくらいあるオレの顔写真が爽やかに笑っている。なかなかいいぞ!
両端と真ん中に物干しザオをくっつけ、さあ、いざ立ち上げてみよう。
お、重い…。
メンバーの顔が曇った。まさか、こんなに重いとは。こんなもん、ずっと立て続けるわけにはいかんかも。
「みなさん、ここまで結構カネがかかってるんです。必死で頑張るように!」
説得の最中、ボディに「JR東海」と書いた車が近づいてきた。そばを徐行しながらゆっくり走り去っていく。新幹線大爆破を狙うテロリストと勘違いしないでくれよ。

電波の不安定な場所からかけにくかろうから看板を立てる場所は、ライバルよりも50メートルほど
線路寄りに決めた。わっせわつせと4人で運ぶ。
3人は見てくれたな
「仙頭!農家の人にめっちゃ見られてんぞ」
「どこよ?」
あのおっちゃんか…。うわ、こっちに来るし。
「あんたら、どっから来たの?」
「東京です。今日はいい天気ですね」

「ああ」
ジロジロ不審な目で見ながら、おっちゃんは去っていった。まったく、これからってときにジャマしないでくれよ。
さあ、では新幹線に向かって、看板を立てよう。いくぞ、みんな、物干しザオを持て!力を合わせろ!
ゆっくりと広告が立ち上がった。その瞬間、目の前を新幹線が猛スピードで通り抜けていく。今ので
「よし、もうすぐ電話がかかってくるぞ!」
「ホントかよ!」
「たぶんだけどね.!」
「絶対ね-よ!」

新幹線は次から次へと通り過ぎ
ていく。看板は3人で持ち、15分おきに1人が休憩というローテーションだ。
「おい、そろそろ電話こないか?」
「車内じゃかけにくいだろ。駅に着いてからだよ」
誰かがいいことを言った。そう、オレもそう思う。恋人になるかもしれない男性に初めて電話するのに、電波の不安定な場所からはかけにくかろう。
看板を立てて30分ほど経ったときだった。突然、携帯が鳴った。
非通知だ。

●もしもし.。
○あ、出た(男の声)。
●もしもし。
○……。
●看板を見てのお電話ですか?
○…。
●恋人募集の件ですか?ぼくは男なんで恋人は女性を募集してるんですけど。
○お前、バカなの?
電話は切れた。まイタ電が来ることは想定内だ。仕方あるまい。

先ほど挨拶した農家のおっちゃんがまたやってきた。じっと看板を見ている。
「これ、キミ?」
「…はい」
「大学生?」
「いや違います」
「まあ何でもいいや。うるさいこと言いたくないけど、ここ農道だからね。自分らが仕事に使うんだから、あんまりヘンなことはしないでよ」
「あ、はい、これ以上のことはしませんので」おっちゃんは歩き去った。何をそんなに警戒してんのさ。

1時間が経過した。
「ぜんぜん反応ないね。もう、しんどいんだけど」
「ホントだよ、疲れたよ」

「効果ないんじゃないの?」男のくせに、もうへたりやがったか。バカが、まだ弱音を吐くの早いんだよ。

上りはともかく下りの新幹線は、1時間前にここを通過したとしても、まだ名古屋にすら着いていない。つまり電話をかけたくてもかけられない女性が、今ごろ静岡あたりにうじゃうじゃいるのだ。

おっ、来た来た。非通知でかかってきたぞ!

●もしもし
○看板の人?(男の声)
●はい。男性はご遠慮してもらいたいんですが.:。
○何でこんなことしてるの?
●恋人探しですよ。
○かかってくる?
●いえ、まだ女性からは…。
○はい、お疲れさん。
ここで電話は切れた。まったく
ヒマ人め。
あ、またあのおっちゃんが来た

よ。面倒くせ-な。
「あんたら、いつまでやるの?」
「一応、夕方くらいまで…」
「こんなん立ててたらJRに怒られるよ」
「線路から何メートル手前は立てちゃダメって決まってんだから」
そんな決まりがあるのか。準備作業をしてたとき、JRの車がやってきたのはその見回りだったのかも。

まあ、でも何メートル手前が駄目なのかわかんないから、このまま続けるとしよう。

おっ、電話が鳴ったぞ。

●もしもし
○もしもし(男の声)。
●もしもし。
○恋人紹介しましようか?
●えっ?
○知り合いのコなんだけど。
●ほんとに?
○するわけねえだろ、バカ!
イタ電ばっかじゃん。

なんだか複数旅行中みたいなノリだった

3時間が経過したが電話はまだ男からのイタズラのみ。そしてまたやっかいそなのがやってきた。農家のおばちゃんだ。
「これ新幹線に見せてるの?」

「はい、そうです」

「これあんた?」

「はい」

「写真のほうがイイ男だね。これい-よ?これ行く?ふ-ん」

何やら納得した様子で去っていくおばちゃん。あなたはかけてこなくてもいいからね。

おっと、着信がきた。番号ちゃんと通知してきてるし、イタズラ

じゃないぞ!

●もしもし。
○えっ(女の声!)。
●もしもし.。
○もしもし!
●看板を見た方ですよね?
○これってマジなんですか!
(テンションがやけに高い)
●もちろん本気ですよ。
○本気だって(周囲に話しかけている)。

突然電話は切れた参折り返しかけてみるか。いや、でもあの感じざなんだか複数で旅行中みたいなノリだったしな。それに声も若かったし。修学旅行とかそんなのかな。折り返したらキモがられそうだぞ。

夕方になり、かなり風も出てきた。また農家のおっちゃんが荷物をまとめてこっちへ歩いてくる。

「まだやってんの?」
「…もうちょっと」
「そろそろにしといたら」
「わかりました」
「あ、それ、ちゃんと持って帰ってよ。そのへんに捨てて帰らないでよ」
「は-い」

そして日が暮れ、看板作戦は終了となった。

撤収中も、東京に戻ってからも、オレの携帯は鳴らなかった。イタ電すらゼロだ。いったいみんな新幹線の中で何やってんだよ。寝てるだけかよ。唯一残った可能性は、あの若そうな女子グループだけだ。番号わかってるし、ちょっとかけてみようかな。まだ夜9時前だしいいでしょ。
トゥルル、トゥルル…。
「はい?」

やっぱり若い女子だ。今度は声が鮮明に聞こえる。
「あの、新幹線のカンバン見てかけてくれましたよね」
「えっ、ああ、マジ?」
電話の向こうがキャーキャ騒がしくなった。
「友達と一緒なんですか?」
「修学旅行なんでえ」
ああ、やっぱそういうことか。
「てことは高校生とか?」
「はい」
後ろからキャーという声がかぶさってきた。何を騒いでんだ。
「何だか賑やかだけど、どこにいるんですか?」
「京都です。えっ、ほら、あの写真の人」(とうやら周囲に話している感じ)
「学校は東京?」
「え、東京なんですか?」
「いや、そうじゃなくて、あなたの学校は東京?」
ここで急に電話口に別の声が出た。
「こんにちはl」
「どうも、お友達?」
「そうです。電話かかってくるんですか?」
「いや、キミたちだけだよ」
「うける、電話代わりますね」
そしてまたさっきの子だ。
「それじゃあ、切りますねえ。頑張ってください」
騒々しいまま、電話は切れた。
女子高生どもから電話があった!

修学旅行で新幹線に乗って京都へ。このパターンからして、彼女らは関東の高校生である可能性が
非常に高い。ということは今から数年、関係を温めれば、お付き合いに至ることもありえるってわけ
だ。
もちろん問題はある。あのノリからして恋人募集を真に受けたと
は思えないし、あの最後の切られ方も迷惑感がたっぷりあふれていた。
さすがにこちらからはもう電話できない・・・というわけでこれにて終了。なんの成果もなく、カンバン作戦は幕を閉じた…。
と思ったら、なんと、それから2週間ほど過ぎた制月半ばになって、その女子高生どもから電話があったのだ!
相手が子供だけに、オレは正直に伝えた。恋人が欲しいのは本音だけど、実はコレは雑誌の企画でもあることを。
「お友達みんなと一緒でいいから、ちょっと話でも聞かせてもらえないかな?」
「読者モデルとかですか?」
「いや、そういうんじゃないけど、ま、会うだけっていうか」
「ああ、いいですよ」
「ところで場所は東京?」
「原宿のマックですけど」
予定では、ここから女子高生たちとの朗らかなひとときを報告するつもりだった。メル友になり、じっくり関係を温めている段階で本ルポは終了すると考えていた。
しかし若者はそんな期待をあっさり裏切ってくれた。マックから電話するオレに、かわいい声はこう返してきたのだ。
「すいません、友達が拒否ってるんでやっぱりやめときま-す」
どうか今度は一人きりでさみしいときにかけてくれと願う毎日だが、たぶんそんな機会は訪れないだろう。

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